大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)1号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔爭点〕一、原判決の認定した犯罪事実は「被告人は○○日施行された衆議院議員総選挙に際し、選挙人にして且長野県第二区より立候補したるMの選挙運動者なるところ、右Mの選挙運動総括主宰者なるNより右候補者に当選を得しめる目的を以て右候補者のため投票並びに投票取纏め方を依頼せられその報酬並びに運動資金として供与せらるる事情を知りながら現金一万円の供与を受領した」というのであつて論旨はこれによる被告人が特定選挙区の選挙人であることが明示されていないから理由不備等があると争つている。

二、右認定事実によると被告人の受領した金一万円は合法的な選挙運動の実費と違法な運動報酬が含まれているが、論旨は、この全部を違法としてその金額の追徴をしている原判決は不当であると争つている。

〔判旨〕一、衆議院議員は公職選挙法の別表第一で定める各選挙区において選挙する(同法第一二・一三条)のであるから、衆議院議員の選挙に際し特定の議員候補者に当選を得しめる目的を以て同候補者のため投票を依頼せられその報酬として金銭の供与を受けたものとして同法第二二一条第一項第四号の適用を受ける選挙人は当該候補者の立候補した特定選挙区の選挙人であることを要することは勿論であり、而して原判決の判示には……(争点記載の事実)……と記載しあるのみで如何なる選挙区の選挙人であるかを詳記していないことは所論のとおりである。然しながら原判決は被告人の本籍竝住居として○○村と判示しており、同所が長野県第二区に属することは同法別表第一により明らかであり又被告人に対する司法警察員の第一回供述調書によると被告人の右住居はその本籍地であると同時に出生地でもあつて、被告人は多年同所で農業を営んでおり、右M候補者の立候補した長野県第二区の選挙人であることが認められる。而して原判決は犯罪事実として……(爭点一記載のとおり)……と判示しておるから、原判決が判示しておる選挙人という文意は被告人が判示M候補者の立候補した長野県第二区の選挙人であるとするにあることは右判文に照し自ら明らかである。故に原判決に理由不備の違法乃至は所論のような法令の適用を誤り罪とならない事実について有罪の認定をしたという違法があるとすることは当らない。

二、しかし選挙運動の実費とその報酬とを区別せず一括してある金額の供与を受けた場合においてこれを区分することができないときは、該金員全部につき違法性を帯びるものとして犯罪の成立するは勿論その受けたる利益もその全部に及びこれにつき沒収又は追徴を免れないものと解すべく、たとえ、後日一旦収受したものの中より任意に選挙運動の実費を支出したとしてもこれにより既に受けたる利益たるの性格を滅失するものでないと解すべきである。原判決が認定した事実は被告人が受領した金一万円の利益はM候補者のため投票並びに投票取纏方の依頼を受けその報酬並びに運動資金として包括して供与せられそのいずれの部分が報酬でいずれの部分が運動資金であるかを区別することができないとしておるのであるから原審がその金額について追徴の言渡をしたのは正当である。

〔説明〕近判旨一の点についての論旨が多いけれどもこれを以つて判示不十分と判断している事例は未だ見当らない。この点に関する同旨判例として第八刑事部判決(二七(う)第四、四四三号・二八・二・二六言渡)を掲げて置く。判旨二については既に大審院以判例とするところであつて特に附加することもない。

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